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仙台地方裁判所 昭和42年(行ウ)14号 判決

仙台市荒巻字北杉山一番地の九

原告

小野寺勝治

右訴訟代理人弁護士

小野寺照東

仙台市北一番丁一一七番地

被告

仙台北税務署長

北田二郎

右訴訟代理人弁護士

伊藤俊郎

右指定代理人

仙台法務局訟務部訟務専門職

久下幸男

行政係長

壱岐隆彦

仙台国税局大蔵事務官

鍋島正幸

鈴木貞冏

佐々木範三

仙台北税務署大蔵事務官

千葉普

石橋義男

主文

被告が昭和四二年七月三一日に原告に対してなした昭和四〇年分所得税再更正決定処分および過少申告加算税賦課決定処分のうち所得税額金一、八〇五、四〇〇円、過少申告加算税額金九〇、二〇〇円を超える部分はこれを取消す。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを四分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、請求の趣旨

1  被告が原告に対してなした別表(一)記載の処分はいずれもこれを取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二、請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

第二、当事者の主張

一、原告の請求原因

1  被告は昭和四二年三月一一日原告に対し別表(二)記載のごとく、それぞれ所得税決定等の処分をなした。

2  原告は同年四月一〇日右処分につき被告に対し異議の申立をしたところ、同年七月四日その一部を取消されたが、結局別表(三)記載のごとく所得税等の処分は維持されて、この部分についての異議申立は棄却された結果となったので、原告は同年八月三日それぞれ国税局長に対して審査請求した。

ところがその間被告は同年七月三一日、昭和三九年、昭和四〇年分について別表(四)記載のごとく一部再更正を決定したので、右処分について同年八月三〇日に異議を申立てた。右異議申立は国税局長に対する審査請求とみなされ、国税局長は右審査請求を一括して同年一一月二一日原処分の一部取消す旨の裁決を行い、右は同月二八日原告に通知され、その結果別表(一)記載のごとき処分になった。

3  しかしながら原告が右別表(一)の処分を受けなければならない理由はなく、被告の右処分はいずれも違法なものであるから、その取消を求める。

二、請求原因に対する認否

1  請求原因第1項の事実は認める。

2  同第2項の事実は認める。

3  同第3項は争う。

三、被告の主張

1  被告は原告に対し昭和四八年一二月一九日付で、別表(五)の該当欄記載のとおり、昭和三六年分、昭和三七年分、昭和三八年分および昭和四〇年分の所得税の減額再更正処分ならびに加算税の変更(減額)決定処分を行ないその旨を通知した。

その結果、本件課税処分の経過を各年分ごとに示すと別表(五)記載のとおりとなる。

2  原告は昭和三六年一一月一三日付で宮城県知事に対し金融業開始の届出をなし受理されたが、その以前からも無届けで金銭の貸付を行なってきたものである。しかし原告は被告の当初の調査に対しては記帳した書類の提出は一切せず、僅かに借用証等の一部を提示するのみでその全容を明らかにしなかったので、被告は止むを得ず銀行調査および債務者に対する調査等により昭和三六年分から昭和四〇年分までの各年分の貸付収入利息の捕捉につとめたのである。

而して昭和三六年分から昭和四〇年分までの各課税処分の経過は前記別表(五)記載のとおりであるが、各年分の最終の課税処分の基礎となるべき原告の総所得金額は別表(六)な-し(一〇)記載のとおりである。

3  右別表(六)ないし(一〇)記載の総所得金額算定の根拠は次のとおりである。

(一) 原告は別表(六)の1から5まで、別表(七)の10、別表(一〇)の18から20までについて、被告の主張どおりの収入金額を受領したことがないことを理由に収入金額を否認するが、所得税法第三六条第一項(旧所得税法第一〇条第一項)は、「その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額とする」と規定し、「収入した金額」とは規定していない。従って、現実に受領した収入金ばかりでなく、たとえ未収であってもそれが当該年分において収入すべき金額であればその年分の収入金額となることは明らかである。

(二) 債務者鈴木一夫に対する貸付金について(別表(九)の番号19の1、19の2、別表(一〇)の番号5)

右貸付元本は次のとおり原告の銀行預金から支出されており、訴外下り富士子は単なる名義人であって、当該貸付利息収入の実質的帰属者は原告である(旧所得税法第三条の二)

(1) 原告は昭和三九年八月三一日訴外伊藤万善から貸付金の内金として六〇〇万円を受領し、同日このうち二八七万円を七十七銀行仙台支店の原告名義普通預金口座番号五一四六三番に、一〇〇万円を同銀行北仙台支店下り富士子名義普通預金口座番号五五〇〇九番に、二〇〇万円を宮城第一信用金庫木町支店の原告名義普通預金口座番号三九-五九に、計五八七万円をそれぞれ預金している。

(2) 原告は昭和三九年九月二六日右預金のうち、七十七銀行北仙台支店の原告名義普通預金口座番号五一四六三番から一〇九万円、同銀行の下り富士子名義普通預金口座番号五五〇〇九番から九六万円、計二〇五万円を払戻して、うち二〇万円を同行の原告名義定期預金口座番号六四-二二四一番に預金し、残金一八五万円を同行同支店振出の自己宛小切手で受領している。

(3) 更に原告は昭和三九年九月二六日前記(1)の宮城第一信用金庫木町支店原告名義普通預金口座から一〇〇万円払戻し、前記(2)の自己宛小切手一八五万円と合計して二八五万円を訴外鈴木一夫に交付したことは右自己宛小切手の裏書からも明らかである。

(4) 右の事実から、原告は昭和三九年九月二六日訴外鈴木一夫に対し三〇〇万円を貸付け、一カ月分の利息一五万円を差引いて二八五万円を自己の資金から支出したことは明白である。

(三) 債務者大沼正夫について(別表(九)の番号14)

原告は被告主張の別表(八)の番号5を被告主張のとおり(貸付元本一〇〇万円、利率月六分)認めながら、別表(九)の番号14については、利率を月三分、計算期間を昭和三九年一月一日から同年五月三一日まで利息収入金額を一五万円であると主張しまた後に別表(八)の番号5についても利率を月三分であると主張しているが事実は次のとおりである。

原告は訴外大沼正夫に対し昭和三八年一二月一〇日に元本一〇〇万円を利率月六分の約定で貸付けたものであり、同人はこの金員(元利合計一三〇万円)を昭和三九年六月三〇日に原告に返済した。而して原告が右訴外人から現実に受領した利息収入金額は当該貸付金員の交付時に貸付元本から天引した一ヶ月分の利息六万円と貸付元本返済時における三〇万円計三六万円である。これを昭和三八年分と昭和三九年分の所得に対応するように期間按分すると、昭和三八年分は金四五、〇〇〇円、昭和三九年分は金三一五、〇〇〇円となる。

(四) 債務者佐藤裕治について(別表(一〇)の番号21、21の1ないし3)

原告は訴外佐藤裕治に対し、別表(一〇)の番号21のとおり貸付をなし、また昭和四〇年九月ごろ貸付元本五〇万円、利率月四分五厘、一〇回の分割払いの約束で貸付をなし、右約定利率による利息金を現実に受領しているものである。

(五) 債務者東洋化工(株)について(別表(一〇)の番号11ないし16)

(1) 原告は別表(九)の12、13を認めながら別表(一〇)の11、12を否認しているが事実は次のとおりである。

原告は訴外東洋化工(株)に対し昭和三九年九月八日に元本一五万円、同年九月二五日に元本一〇万円をそれぞれ月四分の利率で貸付けたものであり、その後、原告は右債権計二五万円を訴外宍戸昌に対する貸付債権七五万円(別表(一〇)の番号7ないし10)と一括して一〇〇万円とし、昭和三九年一二月七日宍戸昌所有の宅地(仙台市小田原大梶四〇番地の七 一五〇坪)に抵当権を設定して利率月四分(昭和四〇年一月一月以降は月三分五厘)で引続き貸付けているものである。

右別表(九)の番号12の貸付元本一五万円および番号13の貸付元本一〇万円に弁済された利息の金額の一部を元本に充当した後の貸付元本が別表(一〇)の11、12の元本額であるが、原告は右貸付金に対し別表(一二)のとおりの利息を受領している。

(2) 原告は右(1)の貸付債権とは別に、債務者名義を東洋化工(株)の社長宍戸文子として短期に金銭を貸付け、別表(一〇)の番号13ないし16の利息収入を得ていたことは次のことから明白である。

(イ) 訴外東洋化工(株)の帳簿には原告と同訴外会社との金銭消費貸借について本件貸付債権についても明確に記載されている。

(ロ) 右(イ)の帳簿に基づいて作成された訴外東洋化工(株)の確定申告書の添付書類には決算日(各年九月三〇日)における原告からの借入残額の記載があり、その金額は右の(イ)の借入残額と一致している。

(ハ) 原告は別表(一〇)の16の債権を保全するため宍戸文子所有の東洋化工(株)の株券(額面五万円のもの二枚)を担保として預り「預り証」を交付している。

(ニ) 原告は右貸付債権に対する利息として別表(一三)のとおり金員を現実に受領している。

(六) 債務者高橋ハルヨについて(別表(一〇)の番号52、53、53の1ないし7、54)

別表(一〇)の番号44、45、46、47、48、49、50、51、52(元本二三三、六八七円の分)、52(元本一四九、五一九円の分)52(元本七七、六五一円の分)、53(元本四四五、七四六円の分)、53(元本四五四、三五四円の分)、53の7は、それぞれ別表(九)の番号31、38の2、33、34、35、36、37、38、25、38の3、27の2、29の2、38の4、32の各貸付元本に弁済された利息の金額の一部を各元本に充当した後の貸付元本であって、昭和三九年から継続しているものである。

(七) 債務者荒川新二郎について

(1) 別表(九)の番号20の1ないし4、別表(一〇)の番号34、35について

原告は訴外荒川新二郎に対し昭和三九年六月一〇日金四〇万円を利息月五分で貸付け、同日に同日から同年七月一〇日までの利息として金二万円、同年一〇月三一日に同年七月一一日から同年八月一〇日までの利息として金二万円、同年一一月二六日に同年八月一一日から同年一一月一〇日までの利息として金六万円、同年一一月二六日に同年一一月一一日から同年一二月三一日までの利息として金三三、三三四円、同年一一月二六日に昭和四〇年一月一日から同年六月一〇日までの利息として金一〇六、六六六円、同年七月一八日に同年六月一一日から同年八月一〇日までの利息として金四万円を受領し、同年九月二二日に連帯債務者渡部一意の財産を競売し、貸付元本の一部一四六、三一〇円を回収している。

右受領した利息の利率を制限利率により計算し、超過額を元本に充当計算すると別表(九)の番号20の1ないし4、別表(一〇)の番号34、35のとおりとなる。

(2) 別表(一〇)の番号36について

原告は昭和三九年一一月二四日金二〇万円を利息月五分の約定で貸付け、利息制限法超過の利息を受領している。

別表(一〇)の番号36の元本一九一、四四〇円は別表(九)の番号21の貸付元本二〇万円に弁済された利息の制限利率超過分を元本に充当した後の貸付元本で昭和三九年分から継続している分であり、番号36のその余の分はいずれも制限利率超過分を順次元本に充当したものである。

(八) 債務者安永絢子について(別表(一〇)の番号26)

貸付元本は別表(九)の番号15の元本三〇万円について弁済された利息のうち利息制限法超過分を元本に充当した後の貸付元本で昭和三九年から継続しているものであり、また前記(一)の理由により収入すべき金額によったものである。

(九) 債務者伊藤万喜について

(1) 別表(六)の番号6、7について

原告は昭和四二年八月三日付で仙台国税局長に提出した昭和三六年分所得税の審査請求書の収支計算書において被告の主張を上回る利息収入金額を自認している。

(2) 別表(六)の番号8、9について

仙台地方裁判所昭和四〇年(ワ)第三〇六号貸金請求事件(原告小野寺勝治、被告伊藤万喜)の昭和四二年一一月一七日言渡しの判決写の第一別表の(イ)記載のとおり、原告は右訴外人に対し、昭和三六年四月一五日、元本二〇〇万円、利率月四分、弁済期昭和三六年一〇月一五日の約定で金銭を貸付け、更に同年七月一日に右元本二〇〇万円に同年六月三〇日までの利息二〇二、六五六円を加えて元本を二、二〇二、六五六円とし、利率月四分、弁済期同年一二月三一日の貸借契約を締結したものであり、利率を利息制限法所定の制限に従って算定したものである。

原告は右貸付金は訴外下り富士子(原告の妻)が訴外伊藤万喜に貸付けたものであると主張するが、昭和三六年四月一五日原告が訴外下り富士子名義で二〇〇万円貸付け、以後六ヶ月ごとに未収利息を貸付元本に組入れ、準消費貸借契約を締結して自己の債権として支配管理していたものである。

従って当該貸付金から生ずる利息は原告に帰属するものであり、その計算の経過は別表(一一)のとおりであるが、利息制限法の制限に従がい算定すると前記別表(六)の8、9およびその継続分である(七)の12、13、(九)の2のとおりとなる。

(3) 別表(七)の番号1ないし11について原告は昭和四二年八月三日付で仙台国税局長に提出した昭和三七年分所得税の審査請求書の収支計算書において自認しているものである。

番号1の貸付元本一九〇万円は別表(六)の番号1ないし7の元本の合計である。

また番号9の貸付元本六三八万円は番号1ないし8の貸付元本の合計額である。

(4) 別表(七)の番号12は別表(六)の番号9の貸付元本の継続であり、別表(七)の番号13は右12の継続である。

(5) 別表(八)の番号1ないし4について

仙台高等裁判所昭和四二年(ネ)第四一八号貸金請求控訴事件(控訴人小野寺勝治、被控訴人伊藤万喜)の昭和四三年三月二五日付控訴人の準備書面の第一別表で控訴人自ら主張しているとおりである。

右番号1は別表(七)の番号9ないし11の貸付元本の合計額であり、別表(八)の番号1の2の貸付元本は別表(七)の番号13の継続分である。

(6) 別表(九)の番号2の1ないし2の3について

原告は訴外伊藤万喜に対する貸付金の元利合計が一六、九三九、〇〇〇円となったので同日原告と訴外人間で右元利合計金を金五六四万円、金六九二万円、金四、三七九、〇〇〇円の三口の貸付金に改める準消費貸借契約を締結し、弁済期を同年一二月三〇日(元本四、三七九、〇〇〇円の口については同年一二月三一日)、利息の定めなく、損害金を日歩一三銭(元本四、三七九、〇〇〇円の口については日歩一五銭)と定めたことは仙台地裁昭和四〇年(ワ)第三〇六号貸金請求事件について昭和四二年一一月一七日言渡された判決の理由三の2および仙台簡裁昭和四〇年(ハ)第二一〇号所有権移転請求保全仮登記抹消登記手続請求事件等から明らかである。

番号2の1の四、二二二、〇〇〇円、2の2の五一八万円、2の3の三、二七八、〇〇〇円は右一六、九三九、〇〇〇円を三口に分けた五六四万円、六九二万円および四、三七九、〇〇〇円の比率によって昭和三八年七月一日現在における元本一二六八万円を按分した金額によったものである。

(7) 別表(九)の番号2の4の貸付元本二〇〇万円は別表(八)の番号1の2の継続分であり、また昭和三八年七月一日現在における元利合計の貸付金五〇〇万円の利息を含まない貸付元本の額である。

別表(九)の番号5の4、5の5、5の7の各貸付元本は、昭和三九年八月三一日に弁済された六〇〇万円のうち元本に充当される金額九一三、五八二円を、同表の番号2の1、2の2、2の4の各貸付元本の比率により按分し、それぞれ右元本へ充当した残額の貸付元本である。

同表の番号5の2、5の3、5の6の各貸付元本は、同表の番号1、2および2の3の継続した分である。

同表番号5の10、5の11、5の13の貸付元本は昭和三九年一二月三〇日に弁済された二〇〇万円のうち元本に充当された金額五七二、三四〇円を、同表の番号5の4、5の5、5の7の貸付元本の比率により按分しそれぞれ充当した後の貸付元本である。

(8) 別表(一〇)の番号3、4、4の2、4の3、4の4、4の5の貸付元本は昭和三九年分(別表(九))から継続分であり、別表(一〇)の番号4の6、4の7、4の10の貸付元本は同表の番号3、4、4の4の継続分である。

同表の番号4の8、4の9、4の11の貸付元本は昭和四〇年一月二二日に弁済された一〇〇万円のうち元本に充当される七三九、四六六円を、同表の番号4の2、4の3、4の5の貸付元本の比率により按分し、それぞれ元本へ充当した後の貸付元本である。

(一〇) 債務者鈴木典男に関する別表(一〇)の番号56について

被告は原告の訴外鈴木典男に対する貸付元本二四万円の未回収の金二三八、七〇〇円を貸倒金として特別経費に計算し主張したところであるが、右は真実に反し錯誤に基づくものであって、真実は昭和四一年一二月二五日原告と右訴外人との間において右貸付債権を月賦償還する旨の示談が成立しており貸倒金に該当しないので、自白を撤回し、右貸倒金を必要経費から除算し主張する。

(一一) 算出所得金額について

原告は被告主張の各係争年分の算出所得金額を全部否認しているが、原告が右係争年分の異議申立および審査請求で主張した一般経費は昭和三九年分二四、〇〇〇円(督促手数料)のみであって、仙台北税務署管内の同業者に比して極めて僅少であると認められるので、被告は右同業者の平均算出所得率を別表(一四)のとおり算定し、これに基づいて原告の各年分の算出所得金額を推計したものであって、原告主張の一般経費を上回る金額を積極的に一般経費(収入金額-算出所得金額)として認めたものである。

(一二) 原告は別表(六)ないし(一〇)の貸金について殆んどすべて利息制限法超過の利息の約定を各債務者と結んでいたので、被告は、従来右約定利率によって原告の所得金額を算定してきたが、昭和四六年一一月九日最高裁判所第三小法廷判決(昭和四三年(行ツ)第二五号)により利息制限法による制限超過利息の課税に関する最高裁判所の判断が示されたことに伴ない従来の算定を改め、前記(二)ないし(九)で特に主張した貸付口以外のものについても、原告がその所得について争わないものおよび約定利率による利息を現実に受領しているものについては従来どおり約定利率により算定し、その余の分については利息制限法所定の制限利率に従って(その結果元本に充当されるべきものについてはそのように計算して)所得金額を算定したところ、総所得金額は別表(六)ないし(一〇)記載のとおりとなったものであり、これに基づいて前記のように昭和四八年一二月一九日減額の再更正処分等をしたものである。

四、被告の主張に対する原告の認否

1  第1項の事実は認める。

2  第2項別表(六)ないし(一〇)について

(一) 別表(六)の番号1ないし5の収入金額は否認し、その余に認める。右収入金額は受領していない。

同表の番号6ないし9は全部否認する。番号8、9は訴外下り富士子(原告の妻)が訴外伊藤万喜に貸付けたものである。

同表の番号10ないし16および19、21は認める。同表の番号17、18、20、22は否認する。

(二) 別表(七)の番号1ないし9、11ないし13、21、22、24、26は否認する。

同表の番号10は認めるが収入金額は否認する。

同表の番号14ないし20、23、25は全部認める。

(三) 別表(八)の番号1ないし4、20、21、23、26は否認する。

同表の番号5の利率は否認し、その余は認める。右利率は月三分である。

同表の番号6ないし19、22、24、25は全部認める。

(四) 別表(九)の番号1、5の2(但し収入金額の合計は金七八、二八七円である)2、5の3(但し収入金額の合計は金一四、一二八円である)、6ないし13、16ないし18、20の1ないし4(但し収入金額の合計は六二、一九九円である)、21(但し収入金額は三、七三八円である)、22ないし25、26、27、28、29、30ないし38、41、43、44は認める。

同表の番号15の貸付月日、利率、計算期間は否認し、その余は認める。右15は昭和三九年七月六日月四分の利息で毎月利息の外に元本充当分として三万円づつ支払い、一〇ヶ月で完済する約定で貸付け、昭和三九年七月金一〇、二〇〇円、八月金一〇、八〇〇円、九月金九、六〇〇円、一〇月金八、四〇〇円、一一月金七、二〇〇円、一二月金六、〇〇〇円、昭和四〇年一月金四、八〇〇円の収益を得、昭和四二年六月二八日保証人星典男の不動産を競売することによって昭和四〇年六月二七日から同年一二月三一日まで日歩九銭八厘の割合による遅延損害金二一、三八二円を得たものである。

同表の番号14の利率、計算期間、収入金額は否認し、その余は認める。右14の利率は月三分、計算期間は昭和三九年一月一日から同年五月三一日まで、収入金額は一五〇、〇〇〇円である。

同表記載のその余の事実は否認する。

(五) 別表(一〇)の番号6ないし10、17、22ないし25、27、32、33、38ないし51、58、59は認める。

同表の番号11、12、18ないし20のうち収入金額は否認し、その余は認める。右収入金額は受領していない。

同表の番号26のうち昭和三九年七月六日金三〇〇、〇〇〇円を利息月四分の約束で貸付けたことは認めるが、その余は否認する。原告は右利息金として昭和四〇年一月金四、八〇〇円の収益を得、昭和四二年六月二八日保証人星典男の不動産競売により昭和四〇年六月二七日から同年一二月三一日まで日歩九銭八厘の割合による遅延損害金二一、三八二円を得たにすぎない。

同表の番号28、29、31のうち収入金額は否認し、その余は認める。

同表の番号34ないし37のうち利率および収入金額を否認する。

同表の番号56の貸倒金の部分は否認し、その余に認める。右貸倒金は二三八、七〇〇円であり、右の点の被告の自白の撤回には異議がある。

同表記載のその余の事実は否認する。

3(一)  同3項(一)の主張は争う。

現実に支払われない未収金からまで収入として税を徴収するということは何人が考えても納得のゆかない違法不当のものである。

(二)  同(二)のうち原告の貸付金であるとの点はいずれも否認する。

右は訴外下り富士子(原告の妻)が貸付けたものである。

(三)  同(三)、(四)は否認する。

(四)  同(五)の(1)の前段は認める。

同(五)の(2)の(イ)、(ロ)は不知、(ハ)は認め、(ニ)は否認する。

(五)  同(六)の(1)は認める。

但し、原告は昭和四〇年七月一日訴外高橋ハルヨに対し、昭和四〇年四月一日以降の利息についてはその支払を全部免除し、同年七月一日以降は無利息とすることを約束したものである。

(六)  同(七)ないし(一〇)については被告主張の別表(六)ないし(一〇)に対する認否(前記2の(一)ないし(五))のとおりである。

(七)  同(一一)は争う。

第三、証拠

一、原告

1  甲第一ないし第六号証、第七号証の一ないし三、第八ないし第一〇号証、第一一号証の一ないし四を提出(なお甲第一一号証の三の宛名の「小野寺勝治」の文字は同人が無断記入したものである)。

2  証人大沼正夫、佐藤裕治、鈴木一夫、下り富士子の各証人および原告本人尋問の結果を援用。

3  乙第一、二号証、第三号証の一、第四号証、第六号証、第七号証の一ないし三、第一一号証、第一三号証の一、第一四、一五号証の各一、二、第一六ないし第一八号証、第二四号証、第二七ないし第三一号証、第三四号証、第三六、三七号証、第四二ないし第四四号証、第五〇ないし第五二号証の成立は不知。乙第四一号証中届出印鑑欄の印影の成立は認め、その余の部分の成立は不知。その他の乙号各証の成立を(乙第三二号証の一、二は原本の存在も)認める。

二、被告

1  乙第一、二号証、第三号証の一、二、第四ないし第六号証、第七号証の一ないし三、第八、第九号証、第一〇号証の一、二、第一一、一二号証、第一三ないし第一五号証の一、二、第一六ないし第三一号証、第三二号証の一、二、第三三ないし第四四号証、第四五号証の一ないし三、第四六ないし第五九号証、第六〇号証の一ないし八、第六一号証の一ないし九、第六二号証の一ないし一三、第六三号証の一ないし六、第六四号証の一ないし二九、第六五号証の一ないし五九を提出。

2  証人竹村昌典、鈴木洋一(第一、二回)、村岡景隆の各証言を援用。

3  甲第一号証、第七号証の一の成立は不知。甲第一一号証の三の宛名の「小野寺勝治」の文字を原告が無断、無権限で記載したことは否認し、その余の部分の成立は認める。その他の甲号各証の成立は認める。

理由

一、被告が原告に対し、昭和四二年三月一一日、別表(二)記載のとおり、昭和三六年から昭和四〇年までの所得を対象として所得税決定等の処分をなしたこと、原告が同年四月一〇日右処分につき被告に対し異議申立をなしたところ、同年七月四日その一部を取消されたが、別表(三)の記載のとおり所得税等の処分は維持されてこの部分についての異議申立は棄却された結果となったこと、そこで原告は同年八月三日国税局長に対して審査請求をしたところ、被告は同年七月三一日、昭和三九年、昭和四〇年分について別表(四)記載のとおり一部更正決定をしたので、原告は右処分に対して同年八月三〇日に異議を申立てたが、それは国税局長に対する審査請求とみなされて国税局長は右審査請求を一括して同年一一月二一日原処分の一部を取消す旨の裁決を行ない、右は同月二八日原告に通知され、その結果別表(一)記載の如き処分となったこと、その後、被告は昭和四八年一二月一九日原告に対し、別表(五)の該当欄記載のとおり、昭和三六年分、昭和三七年分、昭和三八年分、昭和四〇年分について減額の再更正処分を行なつたこと、以上の本件課税処分の経過を各年分ごとに示すと別表(五)記載のとおりとなること、についてはすべて当事者間に争いがない。

二、ところで、右の減額の更正決定または再更正決定等はいずれも先行の決定または更正決定等の一部取消の処分であり、増額の再更正決定は先行の更正決定を吸収する処分であると認められるから、別表(一)記載のとおり昭和三六年分、昭和三七年分についていずれも昭和四二年三月一一日なされた所得税決定処分および無申告加算税賦課決定処分、昭和三八年分については昭和四二年三月一一日なされた所得税更正決定処分および過少申告加算税賦課決定処分、昭和三九年分、昭和四〇年分についていずれも昭和四二年七月三一日なされた所得税更正決定処分および過少申告加算税賦課決定処分の理由の有無が判断の対象になるのであるが昭和三六年分、昭和三七年分、昭和三八年分および昭和四〇年分については昭和四八年一二月一九日減額の再更正がなされて一部取消され、別表(五)記載のとおり、昭和三六年分については所得税額二一、二〇〇円、無申告加算税額五、二〇〇円、昭和三七年分については所得税額一二三、二〇〇円、無申告加算税額一二、三〇〇円、昭和三八年分については所得税額一一〇、八〇〇円、過少申告加算税額五、五〇〇円、昭和四〇年分については所得税額二、〇四七、〇〇〇円、過少申告加算税額一〇二、三〇〇円となったものであるから、右各年分については右のように一部取消されて減額された金額の各処分の理由の有無が判断の対象になるものというべきである。

三、未収利息について

そこで以下各年分ごとに被告主張の原告の所得金額を検討してゆくこととするが、各年分に共通した争点である未収利息について判断する。

旧所得税法一〇条一項は「・・・に規定する収入金額はその収入すべき金額により・・に規定する総収入金額はその収入すべき金額の合計金額による。」と規定し、昭和四〇年四月一日施行の現行所得税法第三六条一項は「その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額とする。」と定め、いわゆる権利確定主義を採用し、所得計算の基礎となる収入金額は、現実に収入のあった金額によるのではなく、収入すべきことが確定した金額によるべきものと解されるから、被告が右の見地から未収利息についてもこれを収入金額に算入したことは何ら違法、不当ではない。

次に利息制限法超過利息との関係について考えるに、利息制限法に定める利率を超過する利息又は損害金が現実に授受され貸主において制限超過部分を元本に充当して処理することなく依然として従前どおりの元本が存在するものとして処理されている場合は右授受された金額が収入金額として課税の対象となるものというべく、右制限法超過の約定利息又は約定損害金が未収である場合はその収入が法律的に保護され収入実現の蓋然性がある部分に限り収入すべき金額に該当するものというべきであるから、前に制限超過利息又は損害金が授受されているときは右超過利息又は損害金を元本の弁済に充当した残元本に対し利息制限法の制限利率による利息又は損害金によって算定した金額が収入すべき金額となるものと解すべきである。

成立に争いのない乙第六一号証の一ないし九、第六二号証の一ないし一三、第六三号証の一ないし六、第六四号証の一ないし二九、第六五号証の一ないし五九によれば、被告も最終的には右の見地から収入すべき金額を算定しているものであることが認められる。

四、昭和三六年分総所得金額(別表(六))について

1  原告が別表(六)の番号10ないし16のとおり金員を貸付け、収入金額欄記載のとおりの収入を得たこと、番号19のとおり特別経費を要したことおよび番号21のとおり給与所得を得たこと、については当事者間に争いがない。

2  訴外伊藤万喜に対する貸付金

(一)  原告が訴外伊藤万喜に対し別表(六)の番号1ないし5のとおり金員を貸付けたことについては当事者間に争いがない。

原告は右収入金額欄記載の利息は未だ受領していないから収入金額に計上すべきではない旨主張するが、その採用できないことは前記三説示のとおりであり、制限利率による各計算期間内の利息が収入金額欄のとおりとなることは計数上明らかである。

(二)  成立に争いのない乙第二五号証および証人鈴木洋一の証言(第一回)によれば、原告は右訴外伊藤に対し同表の番号6、7のとおり金員を貸付けたことが認められ、そうするとその制限内の利息が収入金額欄記載のとおりとなることは計数上明らかである。

(三)  被告は同表の番号8、9の貸付金は原告が訴外下り富士子の名義を用いて右訴外伊藤に貸付けたものであると主張し、原告は右は訴外下り富士子が貸付けたものであると抗争するので検討するに、成立に争いのない甲第八号証、乙第五三、五四号証、乙第六〇号証の一ないし八、証人鈴木洋一(第一回)、同下り富士子の各証言および原告本人尋問の結果によれば、原告と右下り富士子とは昭和二一年ごろから内縁の夫婦であり、右訴外富士子は昭和三〇年ごろから金融業を始め、原告は昭和三六年ごろから金融業を開始したものであること、本件番号8、9の貸金(9は8の継続分である)について、原告は訴外伊藤万喜との間の当庁昭和四〇年(ワ)第三〇六号貸金請求事件において、同人が昭和三六年四月一五日金二、〇〇〇、〇〇〇円を利息月四分、弁済期同年一〇月一五日の約束で原告から借受けた旨の主張を認めていること、昭和四〇年ごろ、右訴外富士子が家出をするなどして一時両者の間が不和となったが、その前後ごろ原告と右訴外富士子との間に誓約書が交わされ、原告が右訴外富士子名義を用いた貸金債権が実質的に原告に帰属することを確認し、原告死亡後は右訴外人に帰属させることを確認し合っていること、右訴外富士子は昭和四二年九月および一〇月の担当協議官に対する意見聴取において、本件の番号8、9の貸金を含む下り富士子名義の貸金は原告が貸付けたものである旨を述べていることが認められ、以上の事実によれば、本件の番号8、9の貸金は原告が訴外下り富士子の名義を用いて訴外伊藤万喜に貸付けたものでその実質所得者は原告であると認められ、証人下り富士子の証言および原告本人尋問の結果中右認定に反する部分はその余の前記各証拠に照らしてにわかに措信し難く、他に右認定をくつがえすにたりる証拠はない。

而して、前記各証拠によれば、右貸金の金額、時期、利息の約定が該当欄記載のとおりであることが認められ、その利息制限法による利率内の利息が収入金額欄記載のとおりであることは計数上明らかである。

3  算出所得金額

証人竹村昌典の証言およびこれにより真正に成立したものと認められる乙第五〇号証によれば、被告は原告の所得計算をするに際し、原告から帳簿書類の提出その他の協力が得られなかったので、原告居住地である仙台北税務署管内の金融業を営む個人および法人のうち、収支の判明している者昭和三六年、昭和三七年分各三名、昭和三八年分五名、昭和三九年、昭和四〇年分各九名について算出所得率(算出所得金額の収入金額に対する百分比)を調査したところ、別表(一四)記載のとおりとなったので、右同業者の平均所得率によって別表(六)の番号18、別表(七)の番号22、別表(八)の番号21、別表(九)の番号40、別表(一〇)の番号55の所得金額を算出したことが認められるが、成立に争いのない乙第二五、第二六号証、第四七ないし第四九号証によれば、原告は、審査請求或いは異議申立において、収入金額から控除すべき必要経費の額について、昭和三六年分借入金支払利息七二、〇〇〇円、昭和三七年分同じく八二、九〇〇円、昭和三八年分同じく一二六、〇〇〇円、昭和三九年分借入利息・督促手数料九七、四三〇円、昭和四〇年分借入利息五七〇、四四二円を主張していることが認められ、被告は右同業者の平均算出所得率を適用することによって原告主張の右一般経費を上廻る一般経費を認めたものであるから、被告の右算定は相当である。

4  以上により原告の昭和三六年の総所得金額を算定すると別表(六)記載のとおり四〇七、一五六円となることが認められる。

五、昭和三七年総所得金額(別表(七))について

1  原告が別表(七)の番号14ないし20のとおり金員を貸付け、収入金額欄記載のとおりの収入を得たこと、番号23のとおり特別経費を要したことおよび番号25のとおり給与所得があったこと、については当事者間に争いがない。

2  訴外伊藤万喜に対する貸付金

(一)  原告が右訴外伊藤に対し番号10のとおり金員を貸付けたことについては当事者間に争いがなく、然らばその利息制限法所定の利率による収入金額が同欄記載のとおりとなることは計数上明らかである。

(二)  前記四の2の認定事実および前出乙第二六号証、証人鈴木洋一の証言(第一回)によれば原告は右訴外伊藤に対し番号1ないし9、11ないし13のとおり金員を貸付けたものであること、そのうち番号1の一、九〇〇、〇〇〇円は前認定の別表(六)の番号1ないし7の継続分であり、別表(七)の番号9の六、三八〇、〇〇〇円は同表の番号1ないし8の元本を合計したものであり、番号12は前認定の別表(六)の番号9の継続分であり、番号13は番号12の継続分であることが認められる。

右番号1ないし9、11ないし13の貸付元本、制限利率、計算期間により収入金額を算定すると同欄記載の金額となることは計算上明らかである。

3  前記四の3認定のとおり被告が同業者比率により番号22の所得金額を算出したことは相当である。

4  以上により原告の昭和三七年の総所得金額を算定すると別表(七)記載のとおり一、〇一二、二五四円となることが認められる。

六、昭和三八年総所得金額(別表(八))について

1  原告が別表(八)の番号6ないし19のとおり金員を貸付け収入金額欄記載のとおりの収入を得たこと、番号22のとおり特別経費を要したこと、番号24のとおりの配当所得および番号25のとおりの給与所得があったことについては当事者間に争いはない。

2  訴外伊藤万喜に対する貸付金

前記五の2の認定事実ならびに証人鈴木洋一の証言(第一回)およびこれにより真正に成立したものと認められる乙第二七号証によれば、原告は右訴外伊藤に対し番号1ないし4のとおり金員を貸付けたこと、そのうち番号1は前記別表(七)の番号9ないし11の元本を合計したものであり、別表(八)の番号1の2は前記別表(七)の番号13の継続分であることが認められる。

右番号1ないし3の貸付元本、利息制限法所定の利率、計算期間により収入金額を算定すると同欄記載のとおりとなることは計数上明らかである。

3  訴外大沼正夫に対する貸付金

原告が訴外大沼正夫に対し昭和三八年一二月一〇日一、〇〇〇、〇〇〇円を貸付けたことについては当事者間に争いはない。

証人鈴木洋一の証言(第一回)およびこれにより真正に成立したものと認められる乙第一、第二号証、乙第三号証の一、二によれば、原告は右訴外大沼に対し右一、〇〇〇、〇〇〇円を昭和三九年六月三日まで貸付けたこと、昭和三八年一二月一〇日貸付けの際一ヶ月分の利息を天引きしたこと、昭和三九年六月三日返済の際は訴外青野チヱが右訴外大沼の不動産を担保として訴外株式会社福島相互銀行から一、三五〇、〇〇〇円を借受け、右訴外大沼がそのうち約一、三〇〇、〇〇〇円を原告に弁済したことが認められ、従って約五ヶ月間の利息として約三〇〇、〇〇〇円を支払ったものというべく、利息は月六分の約定たことが推認され、原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は前記各証拠に照らしてにわかに措信し難く、成立に争いのない甲第九、第一〇号証、証人大沼正夫の証言も右認定をくつがえすにたらず、他に右認定をくつがえすにたりる証拠はない。

そうすると原告は昭和三八年一二月一〇日に一ヶ月分の利息として六〇、〇〇〇円を受領したものと認められ、これを同年同月末日までと翌年一月一日から九日までとに日数に応じて按分すると、昭和三八年分として番号5の収入金額欄記載のとおり四五、〇〇〇円を受領したものというべく、そのうち利息制限法超過分を元本の弁済に充当すると残元本は九六四、〇二〇円となることが認められる。

4  前記四の3認定のとおり被告が同業者比率により番号21の平均所得率により原告の所得金額を算出したことは相当である。

5  以上により原告の昭和三八年の総所得金額を算定すると別表(八)記載のとおり一、〇一二、八〇六円となることが認められる。

七、昭和三九年分総所得金額(別表(九))について

1  原告が別表(九)の番号6ないし13、16ないし18、22ないし25、26、27、28、29、30ないし33のとおり金員を貸付け収入金額欄記載のとおりの収入を得たこと、番号41のとおり特別経費を要したこと、番号43のとおり配当所得を得、番号44のとおり給与所得があったことについては当事者間に争いがない。

2  訴外伊藤万喜に対する貸付金

(一)  番号1、5の2、2、5の3については収入金額の点を除いて当事者間に争いがなく、利息制限法所定の利率による計算期間内の利息が収入金額欄記載のとおりであることは計算上明らかである。

(二)  前出甲第八号証、証人鈴木洋一の証言(第一回)およびこれにより真正に成立したものと認められる乙第二八ないし第三〇号証によれば、原告は右訴外伊藤に対する貸付金の元利合計が昭和三八年七月一日現在で一六、九三九、〇〇〇円なったので、同日原告と右訴外人との間において、右元利合計金を(1)五、六四〇、〇〇〇円、(2)六、九二〇、〇〇〇円、(3)四、三七九、〇〇〇円の三口の貸金に改める準消費貸借契約を締結し、弁済期を(1)、(2)につき同年一二月三〇日、(3)につき同年一二月三一日、利息の定めなく、期限後の損害金として(1)、(2)は日歩一三銭、(3)は日歩一五銭と約定したことが認められる。

而して右昭和三八年七月一日現在の原告の右訴外人に対する貸付金である別表(八)の番号1、2、3、4の元本合計一、二六八万円を右(1)、(2)、(3)の金額の比率によって按分すると、別表(九)の番号2の1の四、二二〇、〇〇〇円、2の2の五、一八〇、〇〇〇円、2の3の三、二七八、〇〇〇円となることが計算上認められ、前記約定損害金の利息制限法所定の利率年三割により計算期間内の損害金を算定すると、番号2の1は八四四、四〇〇円、2の2は一、〇三六、〇〇〇円、2の3は六五五、六〇〇円となることが認められる。

(三)  証人鈴木洋一の証言(第一回)およびこれにより真正に成立したものと認められる乙第三一号証によれば、原告は右訴外伊藤に対し訴外下り富士子名義で貸付けた前記二、〇〇〇、〇〇〇円(別表(六)の8、9、別表(七)の12、13)について昭和三八年七月一日、同日現在の元利合計五、〇〇〇、〇〇〇円を、利息の定めなく、弁済期同年一二月三〇日、期限後の損害金日歩一三銭の約定で貸付けることとする旨の準消費貸借契約を締結したことが認められ、旧元本の二、〇〇〇、〇〇〇円が別表(九)の番号2の4であって制限内の損害金を計算すると四〇〇、〇〇〇円となることが認められる。

(四)  前出第八号証、成立に争いのない乙第三三号証によれば、右訴外伊藤は原告に対し昭和三九年八月三一日六、〇〇〇、〇〇〇円を弁済したことが認められる。

これを前記昭和三六年ないし昭和三八年の訴外伊藤に対する未収利息および右番号1、2、2の1ないし4の各利息、遅延損害金の合計額五、〇八六、四一八円の弁済に充当し、残額九一三、五八二円を右2の1、2の2、2の4の元本額に按分すると2の1につき三三八、三〇〇円、2の2につき四一五、〇四〇円、2の4につき一六〇、二四二円となり、これを前記(二)の八四四、四〇〇円、一、〇二六、〇〇〇円、(三)の四〇〇、〇〇〇円にそれぞれ加算すると番号2の1、2の2、2の4の収入金額欄記載の金額となることが認められる。

(五)  また右利息制限法超過分を元本の弁済に充当計算すると、2の1の残元本は番号5の4の三、八八三、七〇〇円、2の2のそれは番号5の5の四、七六四、九六〇円、2の4のそれは番号5の7の一、八三九、七五八円となることが明らかであり、番号の5の6は番号2の3の継続分であると認められ、右番号5の4の元本に対する同欄記載の利息制限法所定の利率による同欄記載の損害金額は三八五、三四〇円、右番号5の5のそれは四七二、七七九円、番号5の6のそれは収入金額欄記載のとおり三二五、二四三円、番号5の7のそれは一八二、五四〇円となることは計算上明らかである。

(六)  前出甲第八号証によれば原告は右訴外伊藤から昭和三九年一二月三〇日二、〇〇〇、〇〇〇円の弁済を受けていることが認められる。

そこで右二、〇〇〇、〇〇〇円を右(五)の損害金および前記(一)の5の2、5の3の利息の合計額一、四二七、六六〇円の弁済に充当し、残金五七二、三四〇円を、5の4、5の5、5の7の元本額に按分して弁済充当すると、5の4につき二一一、九三八円、5の5につき二六〇、〇一四円、5の7につき一〇〇、三八八円となることが計算上明らかであり、これを右(五)の5の4、5の5、5の7の損害金額にそれぞれ加算すると各番号の収入金額欄記載のとおりとなることが認められる。

(七)  右番号5の4、5の5、5の7の元本に右超過損害金を弁済充当すると残元本が5の10、5の11、5の13記載のとおりとなり、番号5の2、5の3、5の6の継続分がそれぞれ番号5の8、5の9、5の12であると認められるところ、利息制限法所定の利率による利息、損害金が収入金額欄記載のとおりであることは計算上明らかである。

3  訴外大沼正夫に対する貸付金

前記六の3認定のとおり原告は右訴外大沼に対し一、〇〇〇、〇〇〇円を月六分の利息で昭和三九年六月三日まで貸付け約定の利息を受領したこと、昭和三八年一二月一〇日支払われた利息を按分すると、昭和三九年分に一五、〇〇〇円支払われたものと認められるが、同年一月一〇日から六月三日までの利息は二八九、三一五円であるから、原告は合計三〇四、三一五円を利息として受領したものと認められる。

4  訴外安永絢子に対する貸付金

証人鈴木洋一(第一回)、同村岡景隆の各証言およびこれらにより真正に成立したものと認められる乙第二四号証、乙第五一号証によれば、原告は訴外安永絢子に対し番号15のとおり昭和三九年七月四日三〇〇、〇〇〇円を、利息月四分、弁済期同年一二月三〇日、損害金日歩二〇銭の約束で貸付けたことが認められるが、同年七月から同年一二月まで原告が利息として収入金額欄記載のとおり合計五二、二〇〇円の収益を得たことは原告の自認するところである。

また右受領した利息の制限利率超過分をその都度元本に弁済充当すると同年一二月三一日現在残元本は二七三、一九三円となることが計算上認められる。

5  訴外鈴木一夫に対する貸付金

(一)  成立に争いのない乙第九号証、第一〇号証の一、二、乙第三五号証、乙第三八ないし第四〇号証、証人鈴木洋一の証言(第一回)およびこれにより真正に成立したものと認められる乙第三四、第三六、第三七号証、乙第四一ないし第四四号証によれば、原告は前記2の(四)認定のように訴外伊藤万喜から昭和三九年八月三一日六、〇〇〇、〇〇〇円を受領したが、同日、株式会社七十七銀行北仙台支店の原告名義普通預金口座(口座番号五一四六三)に二、八七〇、〇〇〇円、同じく同銀行北仙台支店訴外下り富士子名義の普通預金口座(口座番号五五〇〇九)に一、〇〇〇、〇〇〇円、宮城第一信用金庫木町支店の原告名義普通預金口座(口座番号三九-五九)に二、〇〇〇、〇〇〇円合計金五、八七〇、〇〇〇円を預金していること、同年九月二六日右預金のうち七十七銀行北仙台支店の右原告名義普通預金口座から一、〇九〇、〇〇〇円、同銀行の下り富士子名義普通預金口座から九六〇、〇〇〇円、計金二、〇五〇、〇〇〇円が払戻され、同日二〇〇、〇〇〇円が同銀行の原告名義定期預金口座に預金されていること、同日同銀行振出の額面一、八五〇、〇〇〇円の自己宛小切手を原告が受領し、これを訴外鈴木一夫に交付していること、更に同日宮城第一信用金庫木町支店の右原告名義普通預金口座から一、〇〇〇、〇〇〇円が払戻されていること、他方右訴外鈴木一夫所有の不動産について、昭和三九年一〇月二日債権元本極度額金三、〇〇〇、〇〇〇円、根抵当権者下り富士子なる根抵当権設定登記がなされたが、昭和四〇年一一月五日右根抵当権が原告に移転登記されたことが認められ、以上の事実および前記四の2の(三)認定の事実ならびに証人鈴木洋一の証言(第一回)により真正に成立したものと認められる乙第七号証の一によれば、被告が右に認定した一連の預金の預入、払戻の状況を関連あるものと考え、訴外伊藤万喜から受領した六、〇〇〇、〇〇〇円を右のように原告および訴外下り富士子名義の各預金口座に預入れたがその一部を払戻して二、八五〇、〇〇〇円となしこれを訴外鈴木一夫に貸付けたものであり、従って貸主名義は下り富士子であっても実質所得者課税の原則からしても貸主は原告であると認定したのは相当であり、原告本人尋問の結果中右認定に反する部分はにわかに措信し難く、成立に争いのない甲第五、第六号証、証人鈴木一夫の証言も右認定をくつがえすにたらず、他に右認定をくつがえすにたりる証拠はない。

(二)  而して右認定の事実および前出甲第五号証、乙第七号証の一、成立に争いのない乙第八号証によれば、原告は右訴外鈴木に対し番号19の1、2のとおり昭和三九年九月二六日三、〇〇〇、〇〇〇円を利息月五分(その後、前利息支払のときは月四分とすることに改めた)の約束で貸付け、同日、同年一〇月二五日までの利息として一五〇、〇〇〇円、同月三一日に同年一二月二五日までの利息として一二〇、〇〇〇円、同月三〇日に同年一二月二五日までの利息として一二〇、〇〇〇円同月二八日に昭和四〇年一月二五日までの利息として一二〇、〇〇〇円、同月二九日に同年二月二五日までの利息として一二〇、〇〇〇円を受領したことが認められ、別表(九)の番号19の1、19の2の計算期間内に受領した利息は収入金額欄記載のとおりとなることが計算上認められる(右三九年一二月二八日受領の分を同年末までと翌年以降の期間により按分すると二四、〇〇〇円と九六、〇〇〇円となる)。

(三)  また右受領した利息のうち制限利率超過分をその都度元本の弁済に充当計算すると同年一〇月二六日現在二、八八五、六二五円となり、同年一二月三一日現在二、六九九、三九九円となることが認められる。

6  訴外荒川新二郎に対する貸付金

(一)  原告が訴外荒川新二郎に対し番号20の1および21のとおり昭和三九年六月一〇日四〇〇、〇〇〇円、同年一一月二四日二〇〇、〇〇〇円を貸付けたことは当事者間に争いがない。

(二)  成立の争いのない乙第一九ないし第二一号証、証人鈴木洋一の証言(第一回)およびこれにより真正に成立したものと認められる乙第一八号証によれば、原告は右四〇〇、〇〇〇円を利息月五分の約束で貸付け、同年六月一〇日に同日から同年七月一〇日までの利息として二〇、〇〇〇円、同年一〇月三一日に同年七月一一日から同年八月一〇日までの利息として二〇、〇〇〇円、同年一一月二六日に同年八月一一日から同年一一月一〇日までの利息として六〇、〇〇〇円を受領し、そのほかに同年一一月一一日から昭和四〇年六月一〇日までの利息一四〇、〇〇〇円を受領していることが認められ、右一四〇、〇〇〇円を日数に応じて按分すると昭和三九年一一月一一日から同年一二月三一日までの分が三三、三三四円、昭和四〇年一月一日から同年六月一〇日までの分が一〇六、六六六円であることが計数上認められる。

もっとも右一四〇、〇〇〇円の受領の時期、方法についてはこれを確定するにたりる証拠はないが、右訴外荒川の利息の支払状況等から蓋然性の認められる時期のうち計算上原告に有利と認められる昭和三九年一二月末日に支払われたものとした被告の認定(前出乙第六四号証の二二)は相当である。

右利息受領の事実に基づき前記三のようにして収入金額を算定すると番号20の1ないし4の収入金額欄記載のとおりとなることが認められ、超過利息を元本の弁済に充当すると残元本は三〇四、六一七円となることが認められる。

(三)  成立に争いのない乙第二二号証および証人鈴木洋一の証言(第一回)によれば、原告は前記21の二〇〇、〇〇〇円を利息月五分の約束で貸付け、昭和三九年一一月二六日に同年一二月二六日までの利息として一〇、〇〇〇円を受領し、そのほかに同年一二月二七日から昭和四〇年五月二六日までの利息五〇、〇〇〇円を受領していることが認められ、右五〇、〇〇〇円を日数に応じて按分すると昭和三九年一二月三一日までの分が二、三三一円、昭和四〇年一月一日から同年五月二六日までの分が四八、三八七円となることが明らかである。

もっとも右五〇、〇〇〇円受領の時期方法についてもこれを確定するにたりる証拠はないが前同様の理由からこれを昭和三九年一二月末とした被告の認定は相当と認められる。

そうすると番号21の収入金額は収入金額欄記載のとおり一二、三三一円となり、同年末現在の残元本は一九一、四四〇円となることが計算上認められる。

7  訴外高橋ハルヨに対する貸付金

前記1のように原告が訴外高橋ハルヨに対し番号25、27、29のとおり金員を貸付け一ケ月ごとに約定の利息を受領したことについては当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第四五号証の一ないし三、乙第四六号証、証人鈴木洋一の証言(第一回)およびこれにより真正に成立したものと認められる乙第一六号証によれば、原告は右25、27、29の貸金をそれぞれ番号の25の2、27の2、29の2のとおり引続いて貸付けていたこと(右25、27、29に支払われた約定利息中制限超過分を元本の弁済に充当すると残元本がそれぞれ25の2、27の2、29の2となることは計算上明らかである)、また番号38の2ないし4のとおり右訴外人に金員を貸付けたことが認められる。

而して前記当事者間に争いのない番号24ないし38の貸金について約定の利息が支払われていた事実によれば、原告は右番号25の2、27の2、29の2、38の2ないし4についても約定の利息を得ていたことが推認され、然らばその収入金額が収入金額欄記載のとおりとなることは計算上明らかであり、そのうち制限超過分を元本の弁済に充当すると残元本が25の2は二三三、六八七円、27の2は七七、六五一円、29の2は四四五、七四六円、38の2は二四〇、一二五円、38の3が一四九、五一九円、38の4は四五四、三五四円であることが計算上認められる。

8  前記四の3認定のとおり被告が同業者比率により番号40の平均所得率を用いたのは相当である。

9  以上によれば番号39の事業所得の合計額は七、八〇三、二五九円、番号40の算出所得金額は六、七八八、八三五円、番号42の差引事業所得金額は六、〇九二、五八八円、番号45の合計総所得金額は六、二三二、五一二円となることが認められる。

八、昭和四〇年分総所得金額(別表(一〇))について

1  原告が別表(一〇)の番号6ないし10、17、22ないし25、27、32、33、38ないし43のとおり金員を貸付け、収入金額欄記載のとおりの収入を得たこと、58のとおり配当所得を得、59のとおり給与所得があったことについては当事者間に争いがない。

2  訴外伊藤万喜に対する貸付金

前記七の2認定のとおり原告の訴外伊藤万喜に対する貸金は別表(六)の5の8ないし13、即ち別表(一〇)の番号3、4、4の2、4の3、4の4、4の5のとおりであると認められ、制限利率による昭和四〇年一月一日から同年一二月三一日までの利息、損害金は、番号3が一五〇、〇〇〇円、番号4が三六、〇〇〇円、番号4の2が一、〇九八、九五八円、番号4の3が一、三四八、三三〇円、番号4の4が九八一、一〇五円、番号4の5が五二〇、五九三円となることが認められる。

被告は昭和四〇年一月二二日原告が右訴外人から一、〇〇〇、〇〇〇円の支払を受けた旨主張し、証人鈴木洋一の証言(第一回)中にはこれに副うような部分もあるけれども、右証言部分のみから右一、〇〇〇、〇〇〇円の受領があったものとは断じ難く他にこれを認めるにたりる証拠はない。

3  訴外鈴木一夫に対する貸付金

前記七の5認定のとおり原告は訴外鈴木一夫に対し三、〇〇〇、〇〇〇円を貸付け、残元本は二、六九九、三九九円であり、昭和三九年一二月二八日に昭和四〇年一月一日から同月二五日までの利息として九六、〇〇〇円、同月二九日に同年二月二五日までの利息として一二〇、〇〇〇円の弁済を受けていることが認められるので、右の制限利息超過分を元本の弁済に充当計算すると、昭和四〇年一月二六日現在残元本は二、五四三、九五五円となり、その同日以降同年一二月三一日までの制限内の利息は三二一、一二三円であるからこれに右二月二五日までに現実に受領した利息を加えると、番号5の収入金額欄記載のとおり五三七、一二三円となることが認められる。

4  訴外東洋化工(株)に対する貸付金

(一)  原告が右訴外会社に対し番号11、12のとおり金員を貸付けたことについては当事者間に争いがなく、証人鈴木洋一(第一回)、同竹村昌典の各証言およびこれらにより真正に成立したものと認められる乙第一三号証の一によれば、原告は右訴外会社に対し番号13ないし16のとおり金員を貸付けたことが認められる。

(二)  そして、乙第一三号証の一および証人鈴木洋一の証言(第一回)によれば、原告は右訴外会社から番号11、12に対する利息として別表(一二)記載のとおりの金員を、番号13ないし16に対する利息として別表(一三)のとおりの金員を受領していることが認められ、右11の合計額は収入金額欄記載のとおり五二、五〇〇円、12の合計額も収入金額欄のとおり三五、〇〇〇円であるが、13は二、八〇〇円、14は一、七七〇円、15は八、〇〇〇円であり、16は収入金額欄のとおり二五、〇〇〇円であることが認められる。

5  訴外鈴木典男に対する貸付金

原告が訴外鈴木典男に対し番号18ないし20のとおり金員を貸付けたことについては当事者間に争いがない。

証人鈴木洋一の証言(第一回)およびこれにより真正に成立したものと認められる乙第五二号証によれば、右訴外鈴木は原告に対し18の貸金につき一ヶ月分の利息を天引きされ、その後同年五月まで毎月利息を支払い合計一〇〇、〇〇〇円を支払ったこと、19については一ケ月の利息一二、〇〇〇円を天引きされ、その後更に一ヶ月分の利息一二、〇〇〇円を支払ったが同年一一月二二日から同年一二月三一日までの利息を支払わないこと、また20の貸金については一ヶ月分の利息二、四〇〇円を天引きされて支払ったが、一一月二六日以降の利息を支払わないことが認められる。

そこで右19について制限超過利息を元本に充当した残額に対する同年一一月二一日以降の制限内の利息を算定すると、三、五三一円となり、右現実に受領した利息を加えると計二七、五三一円となり、20についても同様に超過分を元本に充当した残額に対する同年一一月二六日以降の利息は七三八円であるからこれを受領した利息に加算すると収入金額欄記載のとおり三、一三八円となることが認められる。

6  訴外佐藤裕治に対する貸付金

(一)  成立に争いのない乙第五号証、証人鈴木洋一(第一回)、同佐藤裕治の各証言およびこれらにより真正に成立したものと認められる乙第四号証によれば、原告は訴外佐藤裕治に対し番号21のとおり金員を貸付け、同年八月一九日に元本と約定の利息金一三五、〇一二円の返済を受け、同額の収入を得たことが認められる。

(二)  ところで、原告が番号21の1のとおり同年九月ごろに五〇〇、〇〇〇円を貸付けたとの点についてはこれに副う右乙第四号証の記載もあるけれども、成立に争いのない甲第二号証、証人佐藤裕治の証言、原告本人尋問の結果およびこれらにより真正に成立したものと認められる甲第一号証に照らしてにわかに措信し難く、右貸金は昭和四一年になされたものであることが窺われるのである。

7  訴外安永絢子に対する貸付金

前記七の4認定のとおり原告は訴外安永絢子に対し昭和三九年七月四日三〇〇、〇〇〇円を利息月四分、弁済期同年一二月三〇日、損害金日歩二〇銭の約束で貸付け、原告の自認する利息受領額をその制限利率超過分を元本に充当すると昭和四〇年一月一日現在の残元本は第番26のとおり二七三、一九三円であることが計算上認められる。

右二七三、一九三円に対する番号26欄記載の利率による計算期間内の金額は九七、七二一円であることが認められる。

8  訴外渡部一意に対する貸付金

(一)  原告が訴外渡部一意に対し番号28、29、31のとおり金員を貸付けたことは当事者間に争いがなく、証人鈴木洋一の証言(第一回)およびこれにより真正に成立したものと認められる乙第六号証によれば、原告は右訴外人に対し30、32、33のとおり金員を貸付けたことが認められる。

また、右乙第六号証によれば、原告は右訴外人から昭和三九年一二月一六日二、八〇〇円(内訳別表(九)番号18に一、四〇〇円、別表(一〇)番号28に一、四〇〇円)、昭和四〇年一月一五日に番号28に二、八〇〇円、同年一月二二日番号29に七、五〇〇円、同年二月二一日に一〇、三〇〇円(内訳番号28に二、八〇〇円、29に七、五〇〇円)、同年三月一日番号30に四、五〇〇円、同月六日に番号31に三、〇〇〇円、同月二一日に一七、一〇〇円(内訳28に二、一〇〇円((月三分に免除))、29に七、五〇〇円、30に四、五〇〇円、31に三、〇〇〇円)、同年四月二九日に一七、八〇〇円(内訳28に二、八〇〇円、29は七、五〇〇円、30に四、五〇〇円、31に三、〇〇〇円)、同年五月二三日に一七、一〇〇円(内訳は三月二一日のときと同じ)、同年六月又は七月に一七、八〇〇円、同年八月に一七、八〇〇円(その内訳はいずれも四月二九日のときと同じ)を利息として弁済し、同年九月一六日に右28ないし31の元本五七〇、〇〇〇円を弁済し利息を右四口で一〇、〇〇〇円に負けてもらいその後それを支払った(内訳は28に一、八四一円、29に四、〇七九円、30に二、四四八円、31に一、六三二円)ことが認められ、そうすると、原告は28ないし31の収入金額欄記載のとおり利息を受領したことが計算上明らかである。

(二)  更に右乙第六号証によれば、原告は右訴外人から番号32の貸金について同年九月二四日二、〇〇〇円、同年一一月二三日二、〇〇〇円を一ヶ月分の利息として受領し、番号33について同月二六日に一ヶ月分の利息として二、六〇〇円受領したことが認められる。

そうすると32の貸金については二ヶ月分の利息として計四、〇〇〇円現実に受領し、また超過利息を元本の弁済にその都度充当すると同年一一月二四日現在四七、六四〇円となるが右金額に対する同年一一月二四日から同年一二月三一日までの制限利率による利息額は九七二円であるから収入金額欄記載のとおり四、九七二円となり、番号33については現実に受領した右二、六〇〇円に同年一二月二五日から同月三一日までの制限利率による利息(元本は超過分を元本の弁済に充当した残)二四三円を加算した二、八四三円となる。

9  訴外荒川新二郎に対する貸付金

(一)  前記七の6認定のように原告は荒川新二郎に対し、昭和三九年六月一〇日に四〇〇、〇〇〇円を利息月五分の約束で、更に同年一一月二四日に二〇〇、〇〇〇円を利息月五分の約束で貸付け、昭和四〇年一月一日現在の残元本は前者番号34のとおり三〇四、六一七円、後者が番号36のとおり一九一、四四〇円であり、右34について同年六月一〇日までの利息として一〇六、六六六円、右36について同年五月二六日までの利息として四八、三八七円を受領しているものと認められるところ、前出乙第二〇、第二一号証、証人鈴木洋一の証言(第一回)によれば、原告は右34について昭和四〇年七月一八日に同年六月一一日から同年八月一〇日までの利息として四〇、〇〇〇円、同年九月二二日に同年八月一一日から同年九月二二日まで日歩九銭八厘の割合による損害金一六、八五六円および元本に対する返済として一四六、三一〇円を受領していること、番号36について昭和四〇年七月一八日に同年五月二七日から同年七月二七日までの利息として二〇、〇〇〇円を受領したこと、同年八月一一日以降は遅延損害金が生じることが認められる。

そうすると原告は番号34の収入金額欄記載のとおりの利息、損害金を現実に受領し、また制限利率超過分を元本の弁済に充当計算し、更に右元本への返済額を差引くと番号35のとおりの残元本となり、その遅延損害金は収入金額欄記載のとおりとなり、番号36については昭和四〇年七月二七日までの利息を受領し、超過利息を元本に充当すると残元本は一四一、七〇一円であるが、その制限内の利息および損害金は収入金額欄記載のとおりであることが計算上認められる。

(二)  前出乙第二〇、第二一号証、成立に争いのない乙第二三号証および証人鈴木洋一の証言(第一回)によれば、原告は右訴外荒川に対し番号37のとおり昭和四〇年八月五日一〇〇、〇〇〇円を日歩九銭八厘の損害金の約束で貸付け、番号37の1のとおり同年六月七日三〇三、〇〇〇円を利息月五分の約束で貸付け、更に番号37の2のとおり同年七月一九日二六七、〇〇〇円を、利息月三分、弁済期同年八月一八日損害金日歩一〇銭の約束で貸付け、右37の1の貸金に対し同年八月六日までの利息として三〇、三〇〇円を受領したことが認められる。

そうすると、右37の収入金額は一四、六〇二円(利息制限法の年三割六分によるのではなく約定利率日歩九銭八厘によるべきである)、37の1は現実に受領した金額、37の2については制限利率により各収入金額欄記載のとおり収入金額があったものとみるべきことは計算上明らかである。

10  訴外高橋ハルヨに対する貸付金

(一)  前記七の7認定のとおり、原告は訴外高橋ハルヨに対し別表(九)の番号25、25の2、27、27の2、29、29の2、38の3、38の4のとおり金員を貸付け、期末の残元本は別表(一〇)の番号52の二三三、六八七円、同番号の七七、六五一円、53の四四五、七四六円、52の一四九、五一九円、53の四五四、三五四円のとおりとなり、番号53の7は別表(九)の番号32につき前記のとおり弁済された利息のうち制限利率超過分を元本の弁済に充当した残元本で継続分と認められるところ、右各貸金の制限利率による計算期間内の利息が52(三口)、53(二口)について各収入金額欄記載のとおりであり、53の7は八、三六六円であることが計算上認められる。

なお、被告は右53の7について原告が一八、〇〇〇円を受領したように主張するが成立に争いのない乙第四六、第四九号証のみではこれを認めるにたらず、他にこれを認めるにたりる証拠はない。

(二)  前出乙第一六号証、乙第四五号証の一ないし三、乙第四六号証によれば、原告は右訴外高橋に対し、番号53の1ないし6のとおり利息を月三分と定めて貸付けたことが認められ、右貸金に対する制限利率による計算期間内の利息が各収入金額欄記載のとおりであることは計算上明らかである。

11  前記四の3の認定のとおり被告が同業者比率により番号55の平均所得率を用いて所得金額を算出したのは相当であると認められる。

12  原本の存在と成立に争いのない乙第三二号証の一、二、証人鈴木洋一の証言(第一、二回)およびこれにより真正に成立したものと認められる乙第五二号証によれば、前記番号19、20の貸金について前記訴外鈴木典男と原告とは昭和四一年一二月二五日示談し、右訴外人は連帯保証人と共に原告に対し、右合計金二四〇、〇〇〇円を毎月五、〇〇〇円づつ月賦返済することを約束していることが認められるので、右は未だ貸倒金に該当しないこと、従って被告が当初右貸金を貸倒金として特別経費に計上したのは真実に反し錯誤に基づくものであることが認められる。

その他の番号56の特別経費については当事者間に争いがない。

13  以上によれば番号54の事業所得の合計額は六、七九〇、一二三円、番号55の算出所得金額は五、九〇七、四〇七円、番号57の差引事業所得金額は五、三三九、八五七円、番号60の合計総所得金額は五、五一六、四三七円となることが認められる。

九、以上の次第で原告の総所得金額は昭和三六年分が四〇七、一五六円、昭和三七年分が一、〇一二、二五四円、昭和三八年分一、〇一二、八〇六円、昭和三九年分は二、八八〇、七二三円以上、昭和四〇年分は五、五一六、四三七円と認められ、また前記のように昭和三六年分、昭和三七年分については所得税決定処分、昭和三八年ないし昭和四〇年分については更正決定処分がなされたものであるところ、成立に争いのない乙第五六ないし第五九号証によれば、右総所得金額から所得の控除を行ない税額を算定すると、昭和三六年分の確定納税額は二一、二〇〇円、無申告加算税額は五、二〇〇円であり、昭和三七年分の確定納税額は一二三、二〇〇円、無申告加算税額は一二、三〇〇円、昭和三八年分の確定納税額は一一〇、八〇〇円、過少申告加算税額は五、五〇〇円、昭和四〇年分の確定納税額は一、八〇五、四〇〇円、過少申告加算税額は九〇、二〇〇円となることが認められ、昭和三九年分の確定納税額が六九七、五〇〇円以上、過少申告加算税額が三五、一〇〇円以上となることは明らかであり、被告の昭和三六年ないし昭和三九年分の右課税処分は正当であり、昭和四〇年分については右課税の限度において正当であるがその余は理由がない。

一〇、よって、原告の本訴請求は、被告に対し昭和四〇年分につき昭和四二年七月三一日なした所得税再更正決定処分および過少申告加算税賦課決定処分のうち所得税額一、八〇五、四〇〇円、過少申告加算税額九〇、二〇〇円を超える部分の取消を求める限度で正当であるからこれを認容し、その余は失当として棄却するべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九二条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 伊藤和男 裁判官 後藤一男 裁判官小坏真史は転任のため署名押印できない。裁判長裁判官 伊藤和男)

別表(一)

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別表(二)

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別表(三)

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別表(四)

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別表(五)

(1) 昭和三六年分

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(2) 昭和三七年分

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(3) 昭和三八年分

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(4) 昭和三九年分

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(5) 昭和四〇年分

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別表(六)

総所得金額の内訳表 (昭和三六年分)

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別表(七)

総所得金額の計算内訳表 (昭和三七年分)

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別表(八)

総所得金額の内訳表 (昭和三八年分)

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別表(九)

総所得金額の計算内訳表 (昭和三九年分)

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別表(一〇)

総所得金額の計算内訳表 (昭和四〇年分)

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別表(一一)

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別表(一二)

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別表(一三)

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別表(一四)

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